羽ばたき神泉

あこがれ視線 つまさき背のび

美術室ジャガイモ事件

 ある美術の時間のこと。中学棟6階の美術室に入ると、なぜか机の上にジップロックに入った生のジャガイモが置き去りになっていました。ひとしきり投げて遊んだ後、崩れたジャガイモをどうするという話になり、誰が言い出したのかカーテンの裏に隠蔽することに。そのまま授業は終わり、私たちはジャガイモを残して教室を出ました。

 1週間後、次の美術の時間、恐る恐るカーテンを捲ると...ジャガイモはまだそこにあったのです。黄色かった中身は茶色くなっていました。誰にも見つからなかったのか、誰かが見つけたけれどそのまま放置したのか。ともかく私たちはまた来週を楽しみに教室を後にしました。

 置き去りにされてから2週間後、ジャガイモはぞっとするようなどす黒い色に変化していました。密封されていたジップロックは心なしか膨らんでいるようでした。もうとても先生には言い出せません。

 3週間後。真っ黒い液体に浸ったジャガイモは最早原型を留めていませんでした。ジップロックははちきれんばかりに膨らんでいました。これが破裂したらどんなことが起こるかなんて想像もしたくありません。誰かが袋を開けることを提案しました。私達はそれに同意し、袋は開けられました。近くに形容し難い程の悪臭が漂い始めたので、私達は窓を開け、カーテンの裏にジャガイモを隠しました。──風の強い日でした。窓から入ってきた風が、袋を倒しました。窓枠と、その隣にあった間の悪いことに木でできた棚に、袋の中の液体がこぼれていきました。袋を開けた時とは比べ物にならない強さの悪臭が鼻をつきました。教室の半分が悪臭を訴え、先生は対処に追われました。私達は何も知らなかったかのように振る舞い、事件は容疑者不明のまま幕を閉じたようでした。臭いは次のクラスの授業まで残っていたそうです。